職場で健康プロジェクト ~社員の元気が会社の元気〜

健康経営セミナー

健康経営企業活力

 キャンペーン企画「職場で健康プロジェクト~社員の元気が会社の元気~」(山陽新聞社主催、アクサ生命保険特別協賛)の一環としてこのほど、岡山市北区柳町の山陽新聞社さん太ホールで「健康経営セミナー」が開かれました。健康経営の第一人者、古井祐司東京大学特任助教の基調講演のほか、中国経済産業局、岡山県の担当者らが健康づくりに向けた施策を説明、企業経営者や労務担当者ら約130人が熱心に聴講しました。
  1. 第1部
  2. 第2部
  3. 第3部

「社員への健康投資が企業の持続的な成長を促す」〜健康経営アドバイザーの活用〜

東京大学政策ビジョン研究センター特任助教
古井 祐司
 ふるい・ゆうじ 東京大学大学院医学系研究科修了、医学博士。同大学医学部附属病院など経て、2012年より現職。現在、内閣府経済財政諮問会議専門委員、経済産業省次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ委員、厚生労働省全国健康保険協会業績評価検討会委員など務める。
社員の健康は重要な経営資源

 健康経営は今、大きなテーマで、国や自治体なども企業を応援していこうという流れにあります。また、社員の健康を経営資源ととらえる考え方が広まってきました。背景には人口減少があります。特に若い人の減少で、人材難が生じています。学生や転職者も、賃金、知名度より、労働時間や職場環境で企業を選ぶようになっています。そのため、今できることは、既存の人材の有効活用です。

 一方、少子高齢化は、健康へのリスクを高めると同時に、生産性の損失を招きます。体調不良による生産性の損失は、医療コストより相対的に大きいことが分かってきました。日本では、社員1人当たりの医療費は10数万円、それに対し生産性の損失は60万円という試算があります。生産性の損失は、仕事や生活のモチベーション、満足度、ストレスなどの影響が大きく、健康経営では血糖値や血圧を下げるだけでなく、職場でのモチベーションを上げることが大事になります。

二の次になりやすい健康

 自分の健康は自分で守るのが基本です。しかし、総死亡に対する突然死の割合は、40代前半が高く、その86%が生活習慣病の重症化でした。協会けんぽの健診レセプトと照合すると、3人に2人が1度も医者に行っていない。現役世代はどうしても健康は二の次になりやすい。また健診結果を分かっているのは受診者の7割で、健診がほとんど役立っていませんでした。自己責任とは言いながら、自助努力だけではだめだという前提で施策に取り組む必要があります。

 日本人は、似た遺伝子を持っていながら、地域によって病気に特徴があります。同様に、職場によっても違いが出ています。

 長時間パソコンの前に座っているシステム系は、血圧が高い傾向です。血圧が140くらいでも40代前半で、脳卒中などで夜中に倒れるケースが 見られます。残業の際、深呼吸やお茶やコーヒーなどを飲んで胃腸を動かせば、血管も和らぎます。また営業や販売系では、若いのに血糖値が高い傾向があります。顧客優先で、食事と食事の間隔が長く、宴席も多い。飲み会では、まずから揚げではなく、冷ややっこや枝豆を注文する。これを上司がアドバイスすることも健康経営の一歩です。

 要は、職場が悪いのではなく、職場には特徴的な罠がある。それを見える化することで、どうすればいいか、分かってくる。これがデータヘルス(健康医療情報に即した保健事業)を活用した健康経営のメリットです。

職場の動線の中で

 今年6月に閣議決定された骨太方針2016(経済財政運営と改革の基本方針)に、企業による健康経営と、医療保険者の協会けんぽなどによるデータヘルスを両輪として地域を活性化していくことが初めてうたわれました。

 医療保険者の実施するデータヘルスを活用するメリットは中小企業にはあります。うちの会社にはこんな課題があり、こうすればいいんだとはっきり分かる。二つ目は、職種によって特徴があり、他の企業、他地域の取り組みが参考になります。

 同業他社に比べ肥満度が高かった宅配業者は、昨年4月から健康経営を始め、体重計に乗らないと、毎朝の点呼には出られないようにしました。またある美容院では、20代でも50代並みに血糖値が高かった。みんな昼ご飯を食べていなかった。そのため昼食は必ず取り、自販機のメニューも変えました。1年半で数値は改善しましたが、4年後、リバウンドが起きました。転職などでメンバーが入れ替わったためで、ここでは健康経営が会社の文化になっていなかったのです。

 職場では、健康は二の次になりがちです。通勤、朝礼、点呼、会議、昼食など職場の動線に注目した取り組みが大切になってきます。

アドバイザーを派遣

 健康経営を始めるにあたっては、お金がかからず、分かりやすいことも必要です。中小企業に寄り添っている中 小企業診断士、社会保険労務士、金融機関の営業職員などが、ノウハウの情報提供や自治体、協会けんぽへのつなぎをする。これが、今年6月に誕生した健康経営アドバイザーです。現在、資格者は全国で数千人です。

 健康経営の本質は、重要な経営資源である社員の健康に投資し、それによって企業は生産性を上げ、売り上げを伸ばすことです。健康経営をやれば会社は3カ月ぐらいで雰囲気が変わってきますが、最後は、「この会社に入ってよかった」と思えるかどうかです。健康経営に挑戦している岡山でも素晴らしい健康づくりの取り組みを進めていただきたいと思います。

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「健康長寿社会の実現へ」〜岡山県の取り組み〜

岡山県保健福祉部健康推進課総括副参事
竹ノ内 純一

「健康おかやま21」を関係団体と連携し推進

 岡山県は2013年に、「全ての県民が健康で生きる喜びを感じられる長寿社会の実現」を基本理念とした健康増進計画「第2次健康おかやま21」を策定。三つの基本方針として、生活習慣病の発症と重症化予防、社会生活を営むために必要な心身機能の維持・向上、健康を支え、守るための社会環境の整備を定め、10年計画で進めています。同計画では、健康づくりに取り組む県民を、地域や職場、行政などが支援。県では各種健診の受診を推奨するほか、多様な施策を関係機関や団体と連携して行っています。

 その中で昨年、職場や地域で食生活の改善や運動に取り組む「晴れの国33(さんさん)プログラム」を開発。これを多くの企業に知ってもらい、全国健康保険協会(協会けんぽ)岡山支部とも連携しながら健康経営に取り組んでいきます。

岡山大学大学院保健学研究科助教
小出 恵子

晴れの国33プログラムで運動や食生活などを改善

 「晴れの国33プログラム」は年齢や健康状態に関係なく参加でき、従業員らのみで気軽に実施できるものです。特徴は3人1組で取り組むこと。まず日ごろの運動や食生活に関する項目をチェックし目標を設定、互いに励まし合いながら3カ月後に達成度を確認し合います。県内の3団体で効果を検証したところ、プログラム終了時と、終了から3カ月後においても、すべての団体で運動習慣が、一つの団体で食習慣が改善していました。

 同プログラムは、生活習慣の改善だけでなく、従業員同士のコミュニケーションのきっかけになり、職業性ストレスの軽減の可能性があります。プログラムはリーフレットで無料配布し、県のホームページでもダウンロードできます(晴れの国33プログラムで検索)。健康づくりに取り組もうとする企業はぜひ活用してください。

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「健康経営の推進に向けて」

中国経済産業局地域経済部参事官
閑田 英敬

健康経営銘柄に加え、非上場にも顕彰制度

 経済産業省は昨年から東京証券取引所と共同で「健康経営」に優れた企業を「健康経営銘柄」として選定(今年は25社)しています。投資家や就職活動中の学生には、企業選択の目安となっています。

 非上場の大企業や中小企業、医療法人にも健康経営を広めるため、今年度から日本健康会議と共同で新たな顕彰制度「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。こちらも健康経営銘柄と同様に社会的評価が受けられると期待されます。

 中小企業の認定で必須なのは、協会けんぽ等の保険者が進める「健康宣言」、経営者自身の健診受診、健康づくり担当者の設置等です。他に選択項目として従業員の心身の健康づくりへの対策があり、保健師による健康指導、健康に配慮した社食、自販機の飲料を低カロリーにするなど、できることから取り組むことが求められます。取り組みのノウハウは健康経営アドバイザーがサポートします。

 また、企業の健康経営への取り組みに対し、自治体による表彰制度や銀行による低利融資などのインセンティブ(動機付け)措置も増えています。岡山では地元地銀による「健活企業応援ローン」があります。今後もこうした取り組みが増えるよう働きかけていきます。

 健康経営セミナーに先立ち、関係団体担当者による今後の岡山県の健康経営を推進するための健康経営推進懇談会が開かれました。