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セネガルの服工房、規模拡大を実現

  • jam tun代表 田賀 朋子(岡山県矢掛町)
公開年
2019年10~11月
プロジェクト名
「作る人も使う人も、皆の幸せを彩る商品をセネガルから届けたい!」
支援総額
207万4000円

 アフリカ西部・セネガル共和国の工房から、女性服やバッグ、小物を輸入し、岡山県内で販売しています。ブランド名は「jam tun(ジャムタン)」。2019年に「晴れフレ」での資金調達に成功し、工房の規模を大きくすることができました。今では、ブランドの知名度がアップしたとも感じています。(取材・構成 山陽新聞社ビジネス開発局)

<田賀さんの話のポイント>
  1. ①喜ばれるカラフルで大胆な模様
  2. ②プロジェクトの紹介記事が力に
  3. ③顔が見える関係つくりたい

 私は国際貢献に関心があり、2014年から2年間、青年海外協力隊員としてセネガルに滞在しました。活動場所は首都から車で8時間離れた「シンチューマレム」という農村。そこで出会ったのが、色鮮やかな布と、優れた技術を持つ縫製職人でした。村は当時、散乱するビニールごみに困っていましたが、私は布と組み合わせて「かばん」に再生することを提案しました。完成品の評判は上々で、住民の収入アップにつながりました。この取り組みが、帰国後の2017年に立ちあげた「jam tun(ジャムタン)」の原点です。言葉の意味は「平和しかありません」。現地のあいさつ言葉です。

 ジャムタンは現在、女性服やかばん、アクセサリー類などをセネガルから輸入し、販売しています。製造を引き受けているのは、青年海外協力隊時代に出会った縫製職人。私の地元・岡山県矢掛町で展示販売会を毎月1回開き、倉敷や総社といった近隣の街でのイベントにも出店しています。お客さまは女性がメインで、人気の品はワンピースや仕立て用の生地です。カラフルで大胆な模様は日本では珍しいのですが、お客さまには「気持ちに元気が出ます」と喜んでもらっています。

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販売会場の軒先に展示したワンピース=岡山県矢掛町


 晴れフレのサービスを使いクラウドファンディングに挑戦したのは、2019年10~11月です。セネガルにある工房の生産態勢を充実させるための、資金調達が目的。120万円の目標に対し、延べ130人から207万4000円が寄せられました。

 工房は当時、ジャムタンからの受注で仕事が増え、人手が不足気味で作業スペースも手狭でした。一方、ミシンの不調に悩まされ、縫い目が飛んだり、生地に傷が付いたりといったトラブルも起きていました。働き手を増やしミシンを新調することは、安定的な商品作りに不可欠でしたが、そのために私の自己資金を投じることは「ビジネス」とは言えません。そこで着目したのが、クラウドファンディングでした。

 晴れフレを選んだのは、社会貢献型プロジェクトを中心に取り扱う地域密着型サービスだったからです。公正な価格での「フェアトレード」でセネガルから商品を輸入したジャムタンにふさわしい、と思いました。支援を募るプロジェクトページの作成や、支援者へのお礼の品(リターン)の設定…。クラウドファンディングの準備は大変ですが、私が利用した「フルサポートプラン」はキュレーターと呼ばれる担当者がサポートしてくれるので、大変助かりました。また、公開された私のプロジェクトを山陽新聞社が記事で紹介してくれたことは、支援を呼び掛ける上で大きな力となりました。

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田賀さんの支援募集を紹介した山陽新聞(2019年10月11日付)

 寄せられた支援金で、工房は使っていたミシンを全て更新し、数も3台から7台に増やしました。また、作業スペースも広げ、新たに雇ったスタッフのトレーニングを行うこともできました。新型コロナウイルスが世界的に問題となったのは、「さあ、これから」と言う時。セネガルからの商品の輸入がストップし、一時苦しい時期がありました。輸入が再開された今は、おかげさまで売れ行きはまずまずといったところまで戻りました。


 ジャムタンは、セネガルとの「顔の見える関係」づくりに力を入れています。試みの一つとして「セミオーダー」での商品受注を2020年に始めました。日本のお客さまが作りたい服のパターンと使いたい布地を選び、セネガルで仕立てる仕組みです。現地の縫製スタッフは、買い主が分かっている方が作業のモチベーションがより高まるので、一層良い品が生まれます。また、ビデオ会議システムを活用して、日本側のお客さまとセネガルのスタッフとの交流会を開きました。お客さまにとっては、遠い現地との「距離」が縮まったようです。

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セネガルの工房のスタッフたちと

 新型コロナウイルス禍は、この先を見通すことが難しいです。日本国内もまだまだ大変な状況ですが、セネガルにある工房も、商品を安定的に作り続けられるだろうかと不安を抱えています。

 私が国際貢献に関心を持ったのは、開発途上国と経済先進国とで暮らしぶりに大きな開きがあると知ったからでした。開発途上国は貧困問題に直面しており、夢や希望をかなえるチャンスは日本ほど多くありません。世界のどこに生まれても、夢や希望を実現できる社会であってほしい。新型コロナウイルス禍の今だからこそ、ジャムタンはセネガルとの絆をより深めたいと思っています。