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新たなる風、晴れフレを機に吹き出す

  • 木下サーカス社長 木下唯志
公開年
2020年7月~9月
プロジェクト名
「木下大サーカスに支援を コロナ乗り越え笑顔と元気を届けたい」
支援総額
3076万円

 木下サーカス(岡山市北区表町)は2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、公演の打ち切りや中止を余儀なくされました。激減した運営資金をカバーしようと同年、晴れフレで支援を募ったところ、目標の1千万円を上回る3076万円が全国各地から寄せられました。「涙が出る思い」と振り返る木下唯志社長。感謝の念を常に抱きながら、2022年(令和4年)の創立120周年を迎えようとしています。(取材・構成 山陽新聞社ビジネス開発局)

<木下社長の話のポイント>
  1. ①支援募集4日目に目標到達
  2. ②満員状態、戻りつつある日常
  3. ③2022年は120周年、世界一を

 木下サーカスは、2022年(令和4年)に創立120周年を迎えます。この間、戦災などの苦難に直面してきましたが、新型コロナウイルス禍はその一つです。国内での感染が拡大しはじめた20年、公演は大打撃を受けました。福岡や金沢は途中で打ち切り、新潟は全面中止としました。このため3~7月の売り上げは、前の年と比べて90%以上ダウンしました。

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コロナ禍の中での公演。空席が目立つ(2020年)

 サーカス団の維持には多くのお金が必要です。やりくりする中、ショーに出演する動物の飼育・管理費や、施設のメンテナンス費を確保する必要がありました。何か手段がないかと考える中で、見つけたのがクラウドファンディング。地元の岡山県に晴れフレがあると聞き、運営会社の一つ、山陽新聞社に相談して利用を決めました。

 1カ月半ほど掛けて準備した後、20年7月15日に1千万円を目指してご支援を募りました。山陽新聞をはじめ、岡山県内外のマスコミが木下サーカスの呼び掛けを報じてくれました。開始4日目には目標額に届き、締め切りの9月22日までに、1796人から3076万円が寄せられました。これほど多くの方々が支えてくださり、感無量で涙が出ます。あらためてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 ご支援の一部307万6000円は、山陽新聞社会事業団に寄託しました。コロナ禍に立ち向かっている医療従事者の方々のお役に立ちたい、との思いからです。


 公演を巡る状況は、コロナ禍前の日常に戻りつつあると感じています。

 愛知県東部の豊川市で、9月19日から12月5日まで公演を催しました。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、1回の入場定員はコロナ禍前と同じ約2千人とすることができました。地元では約30年ぶりの開催とあって大勢来てくださり、日曜となると満員でした。その前の大阪公演も、入場定員は通常の半数だったものの、満席状態。いずれの公演も、晴れフレでの支援の返礼品に受け取ったチケットでお越しの方がいらっしゃったようです。

 豊川の次は神奈川県での湘南鎌倉公演で、12月19日から来年3月13日までを予定しています。これまで通り、感染防止には万全を期します。テント内では換気装置を作動させ、休憩時にはいすや手すりなどをアルコール消毒します。団員は全員、ワクチンの2回接種を終えており、マスク着用を徹底しています。

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感染防止対策で、観客席のいすを消毒する団員

 コロナ禍は木下サーカスに、絆(きずな)の尊さを、あらためて気付かせてくれました。皆さんも大変な時なのに、晴れフレを通じご支援してくださったのは、まさしく絆の表れ。そして、困った状況の誰かを支えたり助けたりすることは、人間の基本的な営みにほかなりません。木下サーカスも、困難な時代に直面する人々に夢を届けることで、絆をより固める決意です。


 パナソニックの創業者で知られる松下幸之助さんは「万策尽きたと思うな。自ら断崖絶壁の淵に立て。その時はじめて新たなる風は必ず吹く」と語ったそうです。

 「新たなる風」は、晴れフレでの募集を機に吹きはじめました。支援者の方々は、お金と一緒に応援メッセージを専用サイトに送ってくれました。「コロナに負けるな」「公演を見て感動と元気をもらいました」「木下サーカスは日本の貴重な文化です」…。熱のこもる言葉の数々は、私たちの新たな誇りであり、財産です。

 2022年は創立120年となります。長い歴史のあかりをともし続けてくれたファンの皆さんには、感謝しかありません。コロナ禍はまだまだ収束しておらず、先行きを見通すのは難しい現状です。しかし、木下サーカスは尊い絆の上に立ち、日々ベストを尽くす「一日一生」の精神を大事にしながら、世界一のパフォーマンス集団を目指します。

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2022年は創立120周年。「世界一のパフォーマンス集団を目指す」と語る木下社長

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幻想空間の中で迫力あるショーを繰り広げた岡山公演(2018年)。木下サーカスはいつの時代も夢を届ける