INTERVIEW

- 現場を駆ける先輩たち -

(写真はコロナ禍以前に撮影したものもあります)
(肩書は2023年12月現在)

報道部(社会班)の仕事


会話を楽しむ

 主に事件・事故を追いかける社会班で、「刑事司法」を任されています。逮捕、送検された容疑者が、検察庁でどのような処分を受けたかや、起訴された被告の刑事裁判を取材します。ほかにも岡山県の危機管理や医療関係の部署を担当。災害や新型コロナウイルスに関するものや、自主夜間中学校、視覚障害者の治療を支援するNPO団体など、手掛ける題材は幅広いです。

 大学は理系で、DNAやタンパク質を扱う生物学を専攻していましたが、人の話を聞くのが好きで記者職を志しました。どんな人の話にも気付きや学びがあり、長時間聞いていても飽きません。仕事というより、会話を楽しんでいるという感覚が近いでしょうか。

思い出


想像力とバランス

 司法取材は初めてだらけ。担当になるまで裁判所には入ったこともありませんでした。法廷は聞いたことのない専門用語が飛び交います。録音、撮影はもちろん、敷地内では弁護士取材も禁止。一日も早く感覚を身に付けたくて、時間を見つけては裁判の傍聴に通い、書籍を購入して用語を習得、ICレコーダーも使ってはいけないので、メモを早く書く練習もしました。

 こうしてようやく取材するのですが、本当に難しいのは執筆です。事実を伝えることは大切。でもそこには被害者がいます。被害者の家族もいます。そして加害者にも、人権があります。記事を読者がどう受け取るか。書かれた人は社会からどんな風に見られるのか。いろんな立場の人を想像しながら、言葉の選び方、書きぶりなど、バランスを考えて慎重に書き進めます。

 ときに事件発生の背景に、個人の問題だけではなく、社会の偏見や制度の歪みを感じることがあります。裁判記事を通じて、社会に潜む課題を伝えられたらと思っています。

私の仕事って?


記事で世に問う

 「これは記事にしないといけない」という感情に突き動かされる瞬間があります。入社1年目で上司に言われた「記者の仕事は市民の小さな幸せを守ること」との言葉が常に頭にあり、個人的には、理不尽に不利益を被っている人、状況に遭遇したときがそう。地元紙が書かないと埋もれてしまう事実があります。高ぶる感情を抑えながら、何がニュースかを冷静に見極め、先輩に記事化を相談します。書くことで世の中に問うことができる。それが記者という仕事です。

山本 貴之(やまもと たかゆき)

編集局報道本部報道部(社会班)

2017年4月入社。理学部卒。

島根県出身。報道部政治班(岡山市政記者クラブ)、笠岡支社を経て、22年6月から現職。小学校から大学まで続けた剣道は、大声を出して汗だくになるので、気分転換にぴったり。週末は近くのスポーツ少年団の稽古に顔を出し、子どもたちから「先生」と呼ばれている。