社長メッセージ

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代表取締役社長 松田 正己
転換期の地域の羅針盤に

 わが社の題号が「山陽新聞」になって3四半世紀が経ちます。先の大戦後間もない1948(昭和23)年5月1日、軍政下の報道を自己批判する中で、それまでの「合同新聞」を改題し、民主主義の基盤を担う言論報道機関として新たなスタートを切ったのでありました。

 1879(明治12)年創刊の山陽新報と1892(明治25)年に発刊した中国民報が1936(昭和11)年に大局的見地から合併してできたのが合同新聞でした。新憲法のもとで新しい国づくりが始まる中で、岡山空襲で焼失した本社の再建のために苦闘した末の解体的出直しを図る決断でした。

 当日付の社説は「時代の先駆となるべき新聞としても過去の一切を清算し、新しい態勢と気構えをもって再出発しなければならぬ」と宣言しています。それから75年-。地域に親しまれ、信頼される呼称として深く根を下ろし、使命を果たして続けています。

 今、社会はその戦後とも劣らぬ激動、激変、混沌(こんとん)の時代を迎えています。人口減少と少子高齢化、気候変動や自然災害、感染症の頻発、テクノロジーの飛躍的な進展...。3年に及ぶ新型コロナウイルス感染症のパンデミックが社会の様相を一変させ、さらに2022年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻が戦後の繁栄を支えてきた民主主義や安全保障、国際秩序、グローバル経済の根幹を揺るがしています。

 こうした先行き不透明な大きな転換点にあって、どう持続可能な未来を築いていけばいいのか。山陽新聞社は新聞ジャーナリズムの機能とともに地域の羅針盤としての役割を担う地元紙として、その方策を探る二つのプロジェクトを2021年にスタートさせています。

 その一つは、古代に吉備の国と呼ばれた郷土の豊かな歴史と文化に持続可能な地域づくりのヒントを探る「吉備の環(わ)プロジェクト」。山陽新聞グループ社員がチームを編成、岡山県内をほぼくまなく巡り、住民の声、思いを聞く活動などを通して得た情報を元に、地域と連携して具体的なアクションに取り組み、課題解決や魅力創出へつなげています。現在は、豊かな瀬戸内海の再生を目指すアクション「里海 未来へ」を展開しています。

 吉備の環プロジェクトの延長線上にあるのが、国連が2015年に提唱したSDGs(持続可能な開発目標)であります。地球環境を保全しつつ、人類が豊かに暮らせる社会の実現を図るもので、山陽新聞社はSDGsを持続可能な地域づくりの道標でもあると捉え、早くから積極的に先進事例を紙面で伝え、シンポジウムを開くなど啓発活動や機運の盛り上げに努めてきました。2022年7月には、SDGsの達成に向けた世界の報道機関などの枠組み「SDGメディア・コンパクト」に加盟しています。

 もう一つの柱は、デジタル技術でさまざまな問題を解決するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。業務の効率化や働き方の改革、新しいアイデアや新規ビジネスを生み出す仕組みとして進める一方、電子版「山陽新聞デジタル」(愛称・さんデジ)のコンテンツの充実を図る中で、地域で暮らすあらゆる人々が安全安心な暮らしと豊かな未来を築いていく上で欠かせないニュースや情報が集まるゲートウエーとしての機能強化に努めてまいります。

 2022年8月21日付で創刊以来の発行号数(紙齢)が5万号になるのを機に、6万号を迎える2050年に会社に在籍する若手社員に未来志向の新聞社のあり方を議論してもらいました。そこで生まれたキャッチフレーズが「地域を紡ぎ、結び、編む。」です。

 ネット上には今、真偽不明の情報が氾濫しています。一方、山陽新聞の報道は確かな取材に裏付けられたニュースであります。山陽新聞はこれからもジャーナリズム機能を磨き、地域の人々と手を携え、ニュースメディア企業としての役割を果たしていきます。