社長メッセージ

president.jpg
代表取締役社長 松田 正己
転換期の地域の羅針盤に

 山陽新聞社は今年、創刊145年を迎えました。明治、大正、昭和、平成、そして令和へと、時代を超えて紙齢を重ねてこられたのは、地域と読者の皆さまに信頼され、支えられてきたからこそであります。

 前身である山陽新報が産声を上げたのは、1879(明治12)年1月4日でした。創刊号の社説では、「あまねく山陽の事情を写出し、世間有益のことを論述し、もって大いに教化殖産の道を裨益(ひえき)せんとす」と自らが果たすべき役割を宣言しています。

 日々発生する出来事の中から地域の発展向上に資する、人々の暮らしに役立つ事柄を選び、正確、公正、客観的に伝えるとともに解説、論評を加えて、人々に最適な判断材料を提供する。より良い地域づくりのために地域に寄り添い、地域とともに歩む―。この創刊の精神は、富国強兵を進めた末に敗戦を経て再出発し、経済大国へと躍進するなどの時代の変遷にあっても、いささかも変わっていません。

 今、社会は激動、激変、混沌(こんとん)の中にあります。人口減少と少子高齢化、気候変動や自然災害、感染症の頻発、情報通信技術の飛躍的な進展...。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが社会の様相を一変させ、さらに2022年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻が民主主義や安全保障、国際秩序、グローバル経済の根幹を揺るがしています。グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が経済力を拡大しており、それらの動向からも目が離せません。

 先行き不透明な大きな転換点にあって、どう持続可能な未来を築いていけばいいのか。山陽新聞社は真実を報道するジャーナリズムの機能とともに地域の羅針盤としての役割を担う地元紙として、二つのプロジェクトを2021年にスタートさせています。

 その一つは、古代に吉備の国と呼ばれた郷土の豊かな歴史と文化に持続可能な地域づくりのヒントを探る「吉備の環(わ)プロジェクト」。山陽新聞グループ社員がチームを編成、岡山県内をほぼくまなく巡り、住民の声、思いを聞き取る活動などを通して得た情報を元に、地域と連携して具体的なアクションに取り組み、課題解決や魅力創出へつなげています。現在は、豊かな瀬戸内海の再生を目指すアクション「里海 未来へ」を展開しています。

 吉備の環プロジェクトの同一線上にあるのが、国連が2015年に提唱した2030年までに達成すべきSDGs(持続可能な開発目標)であります。地球環境を保全しつつ、人類が豊かに暮らせる社会の実現を図るもので、山陽新聞社はSDGsを持続可能な地域づくりの道標でもあると捉え、早くから積極的に先進事例を紙面で伝え、シンポジウムを開くなど啓発活動や機運の盛り上げに努めてきました。2022年7月には、SDGsの達成に向けた世界の報道機関などの枠組み「SDGメディア・コンパクト」に加盟しています。

 もう一つの柱は、デジタル技術でさまざまな案件を解決するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。業務の効率化や働き方の改革、新しいアイデアや新規ビジネスを生み出す仕組みを探る一方、電子版「山陽新聞デジタル」(愛称・さんデジ)のコンテンツの充実に取り組む中で、地域で暮らすあらゆる人々が安全安心な暮らしと豊かな未来を築いていく上で欠かせないニュースや情報が集まるゲートウエーとしての機能強化に努めてまいります。

 ネット上には今、真偽不明の情報が氾濫、フェイクニュースやデマが横行しています。しかも、生成AI(人工知能)などの先端テクノロジーの加速度的な進化、普及が社会を大きく変えようとしています。そうした中にあって、私たちはどのような選択をしていったらいいのか。判断のための事実に基づく正確で公正公平な真実の報道が、民主主義を支える国民の知る権利を担い続ける上からも益々重く肝要になって来ています。

 山陽新聞社は、そのジャーナリズム機能の一層のブラッシュアップを図りながら地域からの信頼と期待に応えてまいります。