
2025トップインタビュー



営業エリアを九州に拡大
—昨年、事業拡大に向けたM&Aを実施されました。九州北部5県をエリアに営業展開している同業者のイワサ(福岡市)を昨年10月に子会社化しました。歴史もあり、600〜700軒の顧客を持つ企業ですが、後継者不足に苦慮しており、その親会社が、私がかつて修業させてもらった東京の大手食品商社だった縁もあって実現しました。当社としては初のM&Aで、これまでは岡山より西は広島営業所から下関市(山口県)までだった営業エリアが九州に拡大します。福岡や熊本エリアの地域経済は活況を呈しており、よいタイミングで事業を拡大していけると考えています。
—製菓・製パン業界の現状は。
あらゆる原材料価格が高騰する中で、人手不足が続き、さらに働き方改革の影響で製造現場は社員に意欲があっても労働時間短縮を余儀なくされており、三重苦といえます。また、値上げによる客離れのリスクがある中で、付加価値を見いだして価格の改定を行わないとお店が成り立たない状況になっています。働き手が2〜3割減という中で運営しているお店もあり、もともと時間と人手をかけてやってきた業界だけに苦しい状況が続いています。製菓製パンは「幸せ産業」。より多くの人に働いてほしいと思っています。
—「カカオショック」の影響は。
カカオ生産地であるガーナやコートジボワールの異常気象が主原因です。カカオの需要が増えている中で生産が大幅に減り、当社で扱う原料の価格も2倍から3倍に高騰しています。こうした中、クーベルチュールと呼ばれる製菓用の高級チョコレートに代わってパームなどの植物性油脂を加えたコンパウンドチョコレートの流通も増えています。バレンタインデー商戦も、クッキーやキャラメルなどで代替した商品も目立ち、製菓業界はかつて経験したことのない事態に直面しています。
—今後の取り組みはどうですか。
一つは業務のデジタル化推進です。現在、AI(人工知能)を商品提案など営業支援に活用するための手法をベンチャー企業からの助言を受けて検討しています。外部の顧問に指導を受け、SFA(営業支援システム)の導入も進めます。生産性を高める試みに取り組んでいく考えです。子会社化したイワサについては、年内をめどに当社の支店または営業所として再編する方向で組織の一体化によってM&Aの効果をより高めていきたいと考えています。