職場で健康プロジェクト ~社員の元気が会社の元気〜

働き盛りの健康が地域の活力に

岡山県内で広がる「健康経営」

 従業員の健康を大切な経営資源とみる「健康経営」という考え方が広がり始めています。山陽新聞社は本年度、健康経営の普及に向けた啓発キャンペーン「職場で健康プロジェクト〜社員の元気が会社の元気〜」を展開しています。今回は健康経営に関する国や岡山県内の動き、積極的な地元企業の取り組みを紹介します。
国の動き
「優良法人認定制度」を創設
 「健康経営」とは、従業員に健康投資すれば、従業員の活力や生産性の向上などにより組織が活性化、結果的に業績や企業価値が上がるという考え方です。中小企業にとっては、企業のイメージアップに伴い人材確保にもつながることが期待されます。
 経済産業省は2年前から、東京証券取引所と共同で従業員の健康管理に積極的な上場企業を「健康経営銘柄」として選定し、魅力ある企業として投資家に紹介。本年度からは上場企業に限らず2020年までに500社を「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定する制度をスタートさせ、さらに中小企業版の認定制度も創設しています。
岡山県の動き
「健活企業」宣言事業所は500社を超える
 岡山県内では、全国健康保険協会(協会けんぽ)岡山支部が、岡山県をはじめ、県商工会議所連合会など経済6団体と連携協定を結び、健康経営の普及に努めています。
 同支部は今年6月に「晴れの国から『健活企業』応援プロジェクト」をスタートし、健康経営を宣言した事業所を「健活企業」に認定。既に認定数は500社を超えており「予想以上の手応え」(同支部)と、関心の高さがうかがえます。
 岡山県も「働き盛りの方の健康は、県勢の活力の源。県民の健康寿命の延伸につながる」(保健福祉部)、「健康経営は生産性向上に寄与。経営指導員が集まる会議などで周知していきたい」(産業労働部)などとバックアップ。中国銀行とトマト銀行は、健活企業に優遇金利などのインセンティブを付与することで、同プロジェクトに賛同しています。
※健活企業は協会けんぽ岡山支部のホームページに掲載しています。

徳山電機製作所

現場の取り組み
健康状態記す表毎月提出 社員の変調いち早く察知 個人で悩まない社風に
「月間自己評価表」を参考にして、社員に体調管理などについて助言する徳山部長(左)
 配電盤総合メーカーの徳山電機製作所(岡山市東区九蟠)は、「社員が健康で幸せでなければ、いいモノづくりはできない」という徳山靖彦社長の信条の下、90人近いグループ全社員の健康管理に力を入れています。

 特長的な施策としては、全社員を対象に毎月、業務の取り組み状況や健康状態などを自ら採点し記入させる「月間自己評価表」の導入。この評価表によって、社員自身が自己管理能力を高めるほか、管理職も、前月に比べて業務パフォーマンスが下がったり、健康状態が落ちたりした社員の〝変化〟にいち早く気づくことができます。

 「体調不良の兆しはまず業務に表れるので、評価表を見れば早期対応が可能。社員も助けを求めるメッセージが発信でき、抱え込まずに済む。実際、メンタルを含め体調不良者は減少している」と徳山ひろみ取締役管理部長。徳山部長は臨床看護および産業保健活動を看護師として約20年務めたキャリアを生かし、積極的に社員の相談に応じているといいます。

 転職2年目の社員は「毎月の表作成に最初は驚いたが、その表のおかげで、ハードワークを個人で悩まずチームワークでカバーする社風につながっている」としています。

 このほか同社は、毎朝のラジオ体操、風邪や熱中症予防などの啓発ポスターの掲示、リフレッシュのための大型連休の導入などにも取り組んでおり、健診受診率は100%を達成しています。

 今後は、社員食堂での朝食サービスを検討中。さらに「社員の妻や子どもが不健康だったら仕事に支障が出かねない。病院で聞いた家族の病気の治療法や専門用語を分かりやすく解説したり、話を聞いてあげるだけでも、気が休まるはず」(徳山部長)と社員家族の健康管理にも配慮していく方針です。

ネッツトヨタ山陽

現場の取り組み
タニタのノウハウ導入 社員へ活動量計を配布 歩数増え体脂肪率落ちる
店舗ごとに設置している体組成計。来店者も利用できる
 カーディーラーのネッツトヨタ山陽(岡山市南区古新田)は、健康計測機器メーカーのタニタ(東京)と提携し、約200人の社員の健康増進に取り組む独自の「健康プログラム」を推進。「運動」「食生活」「休息」「禁煙」の四つの健康アクションに取り組んでいます。

 「運動」では、27歳以上の社員に歩数、消費カロリーを測定する活動量計を配布。体脂肪や筋肉量を測る体組成計と血圧計は店舗に設置し、各計測データはタニタのデータベースを活用して毎月、個人、店舗、会社全体ごとに分かりやすく〝見える化〟し、肥満や生活習慣病の予防・改善に役立てています。

 「食生活」では、タニタ食堂のメニューを参考に、ヘルシーな昼食を社員食堂で提供。「休息」は睡眠やリラクゼーションの時間が確保できるよう職場の時短を促し、「禁煙」では禁煙外来の受診支援などで喫煙率の低減を掲げています。

 これらの取り組みを本格化して約1年。社員の健康づくりへの意識が高まり、平均歩数が増え、体脂肪率の高い社員が減るなど、まずまず成果が得られたもよう。

 同社の上杉隆士会長は「社員の健康増進をサポートすることは、会社の貴重な経営資源を守ることにほかならない。いつまでも健康で生き生きと働ける社員こそが、会社の持続的発展の原動力」と健康経営の効果に期待。今後は、取り組み意欲を継続できるよう、歩数コンテストや禁煙成功者の表彰制度などを計画しています。