職場で健康プロジェクト ~社員の元気が会社の元気〜

協会けんぽ岡山支部「健活企業」応援プロジェクト開始から1年

岡山で広がる健康経営

 健康経営に取り組む事業所を「健活企業」として独自に認定し、従業員やその家族の健康づくりに取り組んでいる協会けんぽ岡山支部(岡山市北区本町)が、「晴れの国から『健活企業』応援プロジェクト」を始めて1年。岡山県内では健康経営に取り組む事業所が徐々に増えている。同支部では、当面1000事業所を目指しており、「より多くの事業所に参加してほしい」と呼び掛けている。

自社に合った取り組みを

 協会けんぽ岡山支部が「晴れの国から『健活企業』応援プロジェクト」をスタートしたのは昨年6月20日。健活企業に取り組む事業所は毎月増え、現在(6月9日現在)776事業所、参加している被保険者(従業員)数は72797人。岡山県内で健康経営の機運が高まりつつある=グラフ参照。

 取り組み内容は、体操の実施▽歩数計測▽バランスの取れた弁当やヘルシーメニューの社食への導入▽体重計、血圧計の設置など。変わったところでは月1回の野菜支給もあった。また、健診・再検査の100%受診▽ノー残業デーの導入▽有給休暇の取得推進▽長時間労働の是正など、働き方改革との連動も目立つ。同支部では「無理せず、できることから始めることが大切」と話している。

健活企業に応援メニュー

 健活企業は、アンケートなどの評価結果により、中国銀行やトマト銀行の優遇金利融資を受けることができる。また今後、生活習慣病予防健診を受診した健活企業には一部の健診機関から特典が提供されるほか、県知事、支部長表彰なども予定されている。

問題点はカルテで一目


※「健活企業カルテ」イメージ
 健活企業になるには、まず意思表示となる事業主名での「健活企業宣言」と約30項目の「開始時アンケート」の提出が必要。アンケートを元に、最高のSからA、B、Cの4ランクに分類、健活企業の取り組み状況を把握する目安としている。アンケートは毎年実施し、取り組み状況によってランクアップも可能。

 また、健活企業には、血圧、血糖値、メタボなど6項目の自社数値と県平均、同業態平均値を比較した「健活企業カルテ」=イメージ図=が送付され、問題点も分かりやすくなっている。


協会けんぽ岡山支部の
イメージキャラクター
「減士(ヘルシー)くん」

経済団体との連携拡大


県経済団体連絡協議会との協定締結式
 協会けんぽ岡山支部は、岡山県内の経済団体などと包括的連携協定を結び、健康経営の普及や健康づくりに向けた連携の輪を広げている。

 県経済団体連絡協議会はじめ、県商工会議所連合会、県経営者協会、岡山経済同友会、県中小企業団体中央会、県商工会連合会の経済6団体とは昨年6月に締結。内容は、健康経営の取り組み推進に向けた啓蒙活動や健康診査の受診促進、生活習慣病の発症および重症化の予防などで、同月には県社会保険労務士会とも協定を締結した。

健康寿命延伸を後押し

健康経営セミナー開催

 健康経営の普及に向けた「健康経営セミナー」(主催・岡山商工会議所連合会、後援・協会けんぽ岡山支部、アクサ生命保険、淳風会)が13日、岡山市内で開かれ企業関係者らが聴講した。1部で、経済産業省ヘルスケア産業課長の江崎禎英氏が「健康経営の推進~生涯現役社会の構築を目指して~」と題して講演。協会けんぽ岡山支部が「健活企業」応援プロジェクトの内容を説明した。2部では、健康経営実施のポイントについての講演や、地元企業の事例発表などがあった。江崎氏の講演要旨は下に掲載。
講演 健康経営の推進 ―生涯現役社会の構築を目指して―

経済産業省ヘルスケア産業課長
江崎 禎英(えさき よしひで)氏
 健康経営は、企業が従業員の健康管理を、経営戦略の一環と捉えるマネジメントだ。実践すれば、従業員の活力や生産性を向上させ、業績や企業価値の向上につながると期待される。海外では、健康経営投資1ドルに対し3ドルのリターンがあるとの調査もある。

生涯現役社会を実現

 誰もが健康で長生きすれば社会は必ず高齢化する。しかし平均寿命と健康寿命に約10年の差があり、40兆円に上る医療費の多くがこの間に使われている。3分の1以上は糖尿病、がん、高血圧などの生活習慣病であり、これらは現役時代から健康を気遣うことで予防できる。少子高齢化で労働人口が減少に向かう中、長く元気に働ける「生涯現役社会」を実現するために、健康経営は非常に重要だ。

認定制度で企業支援

 経済産業省と東京証券取引所は2015年から、上場企業3500社の中で「健康経営」に優れた企業1業種1社を選定し「健康経営銘柄」に認定している。認定企業は「政府の認めたホワイト企業」として、就活の学生から高い関心が寄せられた。社会的にも大きな反響を呼び、今年2月には、新たに非上場の大規模・中小規模法人をも対象とする健康経営優良法人認定制度を創設した。初回は、330法人を認定。岡山県では4法人が選ばれている。

 学生や親に対して、就職先に望む条件等について調べたところ、双方で4割以上が「健康や働き方への配慮」を重要な条件に挙げていた。今は、業績やネームバリューではなく、「健康経営企業」であるかどうかが重視される時代になっている。さらに健康経営度調査では、3割以上の企業が、製品購入や業務発注に際し、取引先が「健康経営企業であるかどうか」を考慮していることが分かった。健康経営銘柄企業では、9割以上が考慮して取引先を選んでおり、今後はさらに拡大するだろう。

社会を変える取り組み

 健康経営の取り組みを促進するために、低利融資などインセンティブを付与する自治体、銀行などが全国的に増加している。岡山県では地場銀行が「健活企業応援ローン」を打ち出しており、支援の輪も広がっている。

 今後わが国では、65歳以上の高齢者が社会とつながり続け、緩やかな経済活動も行う「生涯現役」を前提としたハイブリッド型社会の構築が必要だと思う。そのため会社時代から健康に気を使う習慣を身に付けることが大切で、健康経営の実践は、まさに社会を変える取り組みになる。

 健康経営を行えば、良い人材を採用でき、低金利融資が受けられ、取引先にも優遇され、業績も上がる。ぜひ経営者の皆さんは健康経営に挑戦してほしい。

地元企業への普及に努めたい


岡山県商工会議所連合会会長
岡崎 彬氏
 健康経営は、社員の健康を経営資源と捉え、戦略的に進めることで企業の生産性向上など活力を生み出す取り組みです。またわが国の少子高齢化、社会保障制度への対応策としても重要な考え方です。商工会議所連合会としても地元企業への普及を図っていきたい。

協会けんぽ

 全国健康保険協会の愛称。主に中小企業に勤める人が加入する医療保険者。国が運営していた政府管掌健康保険事業を継承し、新たに健康保険事業を運営する法人として2008年10月1日に発足。健診などの保健事業や各種保険給付を行う。被保険者とその被扶養者を合わせ全国で約3800万人が加入。岡山県では県民の約4割にあたる72万人が加入している。