2024トップインタビュー

　—昨年は創業７０周年でした。
　父が創業して以来、室内製造業の作業用帽子に特化して製造を続けてまいりました。海外に生産拠点を移さず国内生産を守ってきたことも、７０年継続できた理由だと考えております。昨年は、これまで支えてくれた社員に感謝を込めて給与のベースアップと賞与加算をいたしました。また、岡山県法人会連合会の副会長として納税の啓発に努めてまいりましたことから昨春、旭日双光章受章の栄誉に浴しました。身に余る光栄と感謝しております。
　—業界の動向はいかがでしょうか。
　お取引先である製造業はコロナ禍前の水準に回復されており、当社の売り上げも昨年５月以降は前年比１０％以上の増加をキープしております。業界全体では、後継者不足や人手不足により廃業や転業が進んでいます。その影響か、これまで競合先だった同業他社から当社に注文が入るという、今までにない動きが起こっています。他社とも良好な関係を築いてきたことで、信頼してくださってのご依頼だと受け止めています。
　—「多品種・小ロット・短納期」を貫いておられます。
　作業帽の生産量では５０％を超える業界トップのシェアを堅持しています。国内産にこだわり、２０個からのオーダーメードに対応しています。約３０日で納品できるというのも強み。業界では海外での大量生産にシフトしましたが、当社は国内製造でユーザーの多種多様なニーズに応え続けています。近年はデザインや仕様も複雑化していますが、刺しゅう機を導入し、年間約１７０万個の生産体制を維持しています。高い技術と品質を守るためにも、縫製技術者の育成に、引き続き力を注ぎます。
　—多くの公職にも就かれています。
　理事長を務める倉敷市文化振興財団では３月に「倉敷音楽祭」をはじめ数々の文化事業を行いました。代表をさせていただいている倉敷まちづくり株式会社は、倉敷市文化振興財団に事務局を置いて近隣の伝統工芸作家による「ものづくりネットワーク　くらしき匠の会」の活動支援を行っています。２月より、倉敷市阿知の「阿知町ひろば」で「子ども食堂」の運営を始めました。「匠の会」の作家たちの作品に直接手を触れて、食事を食べてもらおうという企画で、２年間試行する予定です。民芸を通じてあたたかな食の場を提供できればと考えています。