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2024トップインタビュー




カーツエンジンスピリット
 —一昨年の創業100周年でエンジンでの業態転換を宣言しましたが、水素エンジンの開発状況は。
 昨年夏にラボスペック(実験室仕様)エンジンが完成し、現在は量産化に向けての仕様設定をしているのですが、難問が山積みです。その一つがエンジン内部の潤滑と冷却です。小型水素エンジンでの実績データが存在しないというか、世の中に出回っていないので、全くのゼロベースから地道に積み上げている状況です。
 —水素エンジンで業態転換ですか。
 当社が開発できるのはエンジン部分だけです。たとえ完璧なエンジンができたとしても、それに適応する小型水素タンクと小型高圧バルブが世の中にありません。残念ながら当社のような中小企業が立ち入れる分野ではなく、大手水素関連企業の開発を待つしかない状況です。そもそも現在は水素エンジンのニーズはありません。あくまでも将来への備え、エンジンメーカーの社会的責任としてカーボンニュートラルに取り組んでいます。
 —どんなエンジンで業態転換を。
 機密保持契約上、詳しくは申し上げられませんが、エンジンでなければ成り立たない業界です。当社にとって初めての挑戦ですが、燃料がガソリンから航空機燃料に変わります。
 —技術的な課題と今後の予定は。
 水素エンジンと同様に潤滑と冷却です。同じくゼロベースからデータを蓄積しているところです。ありがたいことに水素エンジン、航空機燃料エンジンの開発を通じて蓄積されたデータをエンジンのコンピュータ制御に連動させるEMS(エンジンマネジメントシステム)のノウハウ習得が飛躍的に進んでいます。これは当社の大きな財産です。新業態向けのエンジンは今年中に事業化したいと思っています。
 —一方で既存事業の今後の予定は。
 ただちに無くなるわけではありませんが、世の中の電動化ニーズの高まりに伴って徐々に縮小していきます。それに合わせて経営資源(人材、設備、投資)を徐々に新業態でのエンジン開発へ移行していくのが理想です。
 —最後に新業態への経営課題は。
 何といっても「営業」です。ネットの世の中ですから開発先行でニーズを創出するという手法もあるのですが、未知の新業態においてはリスクが大きすぎます。あらかじめ出口(販売先、スペック)をきちんと確定した上での開発投資が肝心です。




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企画・制作/山陽新聞社広告本部
※2024年4月1日付 山陽新聞朝刊別刷り特集に原則掲載したものです。
※役職名や内容は原則取材時のものです。

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